西山文庫

この物語はフィクションです。

エッセイ「ザ・万歩計」万城目学

 

ザ・万歩計 (文春文庫)

ザ・万歩計 (文春文庫)

 

奇想天外、独特な雰囲気のある小説を書く作者。
俗に「万城目ワールド」というそうな。
それに見合うというか、やはりというべきか…この作者のクセがすごい!
そんな人間的魅力あふれるエッセイ集がこの一冊。

 

作者の半生やデビュー作「鴨川ホルモー」や、ドラマ化した「鹿男あおによし」の制作秘話が知れます。特に鹿男が生まれるきっかけとなったエピソードはおすすめ。
また、各一編が短いのでスラスラ読めるし、隙間時間にもおすすめ。
サクッと笑いたいときにどうぞ。

 

感想といたしましては、こんな友達が欲しかった。です。
そして自分もこんな行動力が欲しいと思いました。

遊牧生活にあこがれてモンゴルの極寒地に飛び込む人います?
万城目氏は飛び込んじゃうんですよね。

 

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

 
鹿男あをによし DVD-BOX ディレクターズカット完全版

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偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)

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「万城目」とは珍しい苗字ですが、読み方は「まきめ」です。

初めてみたとき「まじめ」と読んでしまい

「まじめ まなぶ」とかめっちゃ狙ってるなーと思ったのはここだけの話。(終)

来週、ペットを捨てに行く

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もう面倒見てられない。

 

 買ったときは期待通り、私に楽しみや癒しを与えてくれた。
しかし、それも一週間と続かなかった。

 

 邪魔なので部屋の隅へ投げつける。
それでも、遊んでほしいのか足元へ寄ってくる。
何度も、何度も……

 

鬱陶しい。

 

そんなに遊んでほしいならサッカーでもしようか。
私は渾身蹴りを食らわす。
甲高い声をあげながら玄関へと転がっていく。
それはまるで跳ねる方向の予測がつかないラグビーボールのようだった。

 

すかさず部屋の扉を閉めて締め出す。
お前は冷たい玄関で震えていろ。
これでようやく静かになった。

 

それにしてもこいつらの繁殖力には驚かされた。
気付けばどんどんと増えていく。
どこかで手を打たなければならない。

 

もっとも恐ろしいのは適応力である。
一発蹴りを食らわしたからだろうか、今では玄関の隅でじっとしてる。
大きいものから小さいものまで、鳴き声の一つも上げず、ただこちらをじっと見つめている。
来る日に備え、反撃の牙を研いでいるようだ。

 

日に日に私は恐れを抱くようになった。
いつの日か本当に押しつぶされてしまうのではないかと。
意思の疎通ができれば、まだ望みはあるのだろうが、そんなことはできない。
考えるだけ無駄だ。バカげている。

 

捨てるしかない。
そう頭をよぎった。それが最善の策だ。
こんな恐ろしいものを欲しがる人なんていないだろう。
捨てる。捨てる。捨てる。
それだけを胸に刻み、天に誓った。

 

 

しかし、神は私を見放した。

 

 

仕事帰りの私を出迎えるのはいつもの光景。
ひっそりとこちらを睨みつける鋭い眼光。
ぞっとする。血の気が引き、手にはねっとりとした汗が滲む。
激しい動悸を押さえながら、スマホで曜日を確認する。

 

 

そうか、今日……今日だったのか。

 

 

また新たな一週間がはじまる。

 

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【Netflix】スイス・アーミー・マンを見た感想【人間の極み】

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目次

 

 

あらすじ

無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。果たして2人は無事に、大切な人がいる故郷に帰ることができるのか──!?

 

※ネタバレ注意報発令※

ハリーポッターことダニエル・ラドクリフが大変なことになっていると話題でしたね。
気にはなっていましたが……まぁ、見ることはなく月日は経ちました。

 

なんとなくガス欠ストーリー

そして、いざ見てみると予想以上に大変なことになっていました。
しかも最大の見どころ?が映画の冒頭で終わるという……(上の画像)
掴みとしてはかなり優秀だと思いますが、もっと無人島でサバイバルして欲しかったなーという印象。
ガス欠で打ち上げられたとき、また別の無人島に流れついちゃったのかな?と思いましたもん。ねぇ?皆さんもそう思ったでしょ?
結局、本土に帰れたわけですが、それならあんなにサバイバルします?
もっと早く、街に出れたんじゃない?と思いました。
舞台はアメリカなのかヨーロッパなのか分かりませんけど、やたらと森が広いね。

 

すごいけど羨ましくない

X-MENスパイダーマンなど特殊能力を持った主人公はかっこよく、憧れるものです。
しかし、今回の主人公にはまったく憧れない。
こんな能力目覚めたら逆に死にたくなる。
とは言っても、それらの力は超能力ではなく、人間の力を最大限?高めたものである。
(いや、いくら人間極めても無理だが)
例えば、オナラで水上を走ったり、雨水を体に(胃?)ため込んだり、歯がカッターや髭剃りになったり……
科学的にできないことはないよね、というラインの力であることが人間味を感じる。

 

しかし、そこがいい

どこか不完全な力しかないからこそ親しみを覚えられる。
一度は逃げてしまったがもう一回だけ頑張ってみようという「生へのあがき」
すべてを失い何もわからないが、心がざわつくという「ありのままの自分」
「お前とならできる」につながっていてよかった。まさに青春。
そして、それが物語の目的である「大切な人のところへ帰る」へ突き進み、見ていて気持ちがよかった。
(まぁ、騙してたんですけどね)

あと、気持ちがいいと書きましたが全体的に下品なので気持ちは……良くはない。

しかし、それこそが人間の本来の姿?人間なんてこんなもんじゃん。と言われている気がした。
昨今の衛生観念へのアンチテーゼか。

 

総括

すごいけどすごくなかったり、汚いけど人間味を感じたり。
信頼と裏切りと恋と失恋と……
カッコ悪い等身大の人間を描いていたと思います。
まさかの空想科学ラドクリフを添えて。

 

 

 

これらをまとめた一言は生きる希望となっていた人物、サラが最後に言っていました。

 

 

 

「どういうこと⁉」